定期検診が予防の役割をする
よくわかる子宮頸がん検診

いつから検診が必要なの? 検診の内容は?
子宮頸がん検診について、気になる疑問にわかりやすくお答えします。

定期検診はいつから、なぜ必要なの?20歳を過ぎたら、健康でも2年に1度の検診(細胞診)が予防の役割を果たします。

性交渉によるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染から子宮頸がんに進行するまでには、およそ5年~数十年かかるといわれています。子宮頸がん検診はがんになる前の「異形成」の段階で病変を見つけることが可能なので、定期的に検診を受けていれば、がんに進行する前に発見することも可能で、予防と早期発見につながります。健康でも性交渉経験のある女性なら誰でも子宮頸がんになる可能性があり、初期の子宮頸がんには自覚症状がほぼありません。性体験が低年齢化している現在では、20歳を過ぎたら少なくとも2年に1度の検診(細胞診単独の場合)が大切です。

検査の内容は?子宮頸がん検査には「細胞診」と「HPV検査」があります。

子宮頸部の細胞の変化を調べる「細胞診」

一般的にいわれる「子宮がん検診」とは子宮頸がん検診のことで、「細胞診」という検査が行われます。子宮の入り口(頸部)の細胞を採取し、顕微鏡で調べる検査で、がん細胞だけでなく、がんに進行する可能性のある「異形成」といわれる細胞を発見することができます。そのため細胞診で検査結果に異常があった場合でも、がんになる前の病変の方がほとんどなので、異常があった場合はすぐに医療機関で精密検査を受け、詳しく調べてもらうことが大切です。

細胞診の判定結果(ベセスダシステム)

細胞診の判定結果(ベセスダシステム)

ウイルス感染を調べる「HPV検査」

子宮頸部の細胞がHPVに感染しているかどうかを調べるのが「HPV検査」。子宮頸がんの原因がHPVの感染であることが明らかになり、開発されました。このHPV検査を細胞診と組み合わせて実施することで、検診の精度はさらに高まるといわれていて、海外では併用検診やHPV検査で陽性の場合に細胞診をする国もあります。感染していれば「陽性」、感染していなければ「陰性」と診断されます。

HPV検査で確認できる、超ハイリスクのHPV16型と18型

子宮頸がんの主原因となるハイリスク型HPVは約15種類。そのうち、現在普及しているHPV検査で感染が確認できるのは、約13~14種類。特にHPV16型、18型が子宮頸がんに進展する可能性が高く感染した後の進行スピードも速いといわれています。 HPV検査では、超ハイリスク型ともいわれるHPV16型と18型への感染が確認できる方法もありますので、お医者様へ尋ねてみましょう。

出典:Khan MJ et al. J Natl Cancer Inst. 2005; 97(14): 1072-9.

HPV16型と18型は感染後の進行が速いから放っておくと大変だ!HPV16型と18型は感染後の進行が速いから放っておくと大変だ!

30歳を過ぎたら、HPV検査の受診も検討してみて

日本ではHPV検査は30歳以上の女性に推奨されています。検診方法は「HPV検査単独法」と、細胞診法とHPV検査を同時に行う「細胞診・HPV検査併用法」の2種類があります。HPV検査による検診は、細胞診と比べ「異形成」のリス クがある人を多く見つけられ、陰性の場合、次回の検診間隔を延長できるというメリットがあります。しかし、HPV検査による検診は、現時点で治療の必要がない人に対しても、将来のリスクも含め「陽性(感染)」と判定します。陰性の場合、より大きな安心が得られるHPV検査。現在日本では、20歳以上の女性に対し、厚生労働省が定めている「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」において、2年に1度の細胞診単独法を基本としていますが、一部の自治体や健診センターではHPV単独法に先行し、併用法が導入されています。興味があれば問い合わせてみましょう。

HPV検査が陰性ならば、
より大きな安心が得られるのね!HPV検査が陰性ならば、
より大きな安心が得られるのね!

検査の時間は?検査は痛みもなく、30秒から1分とカンタンです。

細胞診、HPV検査のどちらも、子宮頸部の細胞を採取して検査します。採取方法はまったく同じで、綿棒やブラシで子宮入り口の表面を優しく撫でて細胞を採取します。息を長く吐くことを意識して、力を抜いてリラックス。そうすれば個人差はありますが、基本的には痛みもなく30秒から1分で終わります。

検査の時間は?

どこで、いくらで受けられるの?子宮頸がん検診には助成金制度があります。

子宮頸がんが20代で急増しているため、厚生労働省では20歳から子宮頸がんの検診を受けることを勧めていて、20歳以上の女性なら誰でも加入している健康保険組合や自治体で実施する子宮頸がん検診を受けられます。また検診費用に関しても、職場や自治体が全額または一部を助成してくれる場合があります。HPV検査はまだ試験的に行われている段階ですが、希望する場合は原則自費となります。まずはお住まいの市区町村、お勤め先の状況をチェックしてみてください。

もしHPV検査で陽性と判断されたら?陽性=子宮頸がんではありません。

HPV検査は、将来、子宮頸がんになる危険度をチェックする検査です。結果が「陽性」であってもイコール子宮頸がんということではありません。ほとんどの場合、HPVは免疫力によってからだの外に排除され、検査では検出されなくなります。ただし再検査や精密検査が必要と診断された場合は、医師の指示に従いましょう。
現在日本では、20歳以上の女性に対し、厚生労働省が定めている「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」において、2年に1度の細胞診単独法を基本としています。そのため、HPV検査が「陰性」の場合でも少なくとも2年に1度の検診を受けることが大切です。(※自治体や健診機関によって受診間隔は異なる場合があります)
さらに、検診で異常がなくても、おりものの異常や不正出血などの気になる症状があれば保険診療として、婦人科か産婦人科を受診してください。前述のHPV検査による検診は、一般的に30歳以上で推奨されていますので、20代ではまだパートナーが変わることも多いので、2年に1度の細胞診による検査が重要です。

検査結果が「陽性」であってもイコール子宮頸がんではないのね!婦人科か産婦人科に相談してね。検査結果が「陽性」であってもイコール子宮頸がんではないのね!婦人科か産婦人科に相談してね。

検診で異常が見つかったら?必ず精密検査をうけましょう!

検診にて異常が見つかった場合、さらに「コルポスコープ」と呼ばれる腟拡大鏡を使った精密検査が行われます。子宮頸部の粘膜の表面を詳しく観察し、異常な粘膜の状態や範囲を確認します。コルポスコープによる観察で異常が見られた場合は、異常が見られた部分から小さな組織を取って確定診断が行われ、経過観察か治療が必要かの判断がなされます。検診で異常があっても精密検査で経過観察となることも多く、正しい処置やご自身の安心を得るために、結果を放置せずに必ず精密検査を受けましょう。

子宮頸がんワクチンについて

定期的な検診と共に有効な予防法として、子宮頸がんのワクチン(HPVワクチン)接種があります。しかし、このワクチンは既に感染したHPVを排除する効果はありません。また、すべてのHPVを防ぐものではないので、接種後も、定期的に検診を受けることが大切です。子宮頸がん約90%を防ぐと考えられている9価のHPVワクチンが2020年7月に日本でも承認されましたが、8月現在はまだ任意(自費)接種も定期接種(国の無料接種プログラム)も開始されていません。

子宮頸がんワクチンについて